『ノルウェー珍道中』第13話
前回のお話はこちら。
精神戦だった「Wall of death」。
(詳しくは第10話から。)
なんとか乗り越えた頃、
時は既に21時を超えていた。
少し薄暗くなって来た。
バッケンという場所に山小屋があり、
そこに向かっている。
看板もないし、
何も小屋らしいものが見えて来ない。
体力もほぼ限界。
と、その時。
向こう側の斜面に赤い屋根の小屋が見えた。
バッケンかどうか判らないが、 誰かいたなら、その人に聞ける。 暗くなる時間も。
見た所、こちらの斜面を下り、 向こうの斜面をまた登るような感じだった。
距離から見て、40~50分ぐらい。
下っていたら、橋が見えて来た。 すると、その手前に不思議な光景が。
橋に続く道の横に生える樹に 油絵が飾られている。
「森の展覧会」のような事が 書いてあったと思う。 でも、焦っていたので 足早に通り過ぎた。
この時点から目印の「T」マークが 見当たらなくなって来た。
すると、目の前に何軒か小屋が見えて来た。
「Bratteli(ブラテリ)」
あれ?バッケンじゃないのかぁ。
どこにも人の気配がない。 地図を見直すと、バッケンの手前には サマーコテージの集落があると書かれていた。 ということは、もうすぐバッケン! よかったー。
でも、「T」マークが見つからないから、 進む方向がわからない。
一軒「Cafe →」と書いてあるお家があった。 もしかしたら、人がいるかも。
家の前の門を開けると、 いきなり人工池が広がっていて 池の周りを歩かないと玄関にいけない。
変な家。
ちょっとアートな雰囲気。
扉をたたく。 返事なし。 何度やっても返事はなかった。
背を向けて、歩き出した時、 家の横のテラスから ガサゴソ聞こえて来た。
「すみませーん!」
テラスのある方を見上げて叫ぶと、 女性が顔を出した。
ノルウェー語か何かで、話し始めた。
「あっ、英語しかできないんです。 バッケンはどちらか、教えてもらえますか?」
「ノー、イングリッシュ。」
「あ〜、バッケン? コッチ? アッチ?」
「ア〜、アッチヨ〜。1ジカン。」
「ありがとう〜!!」
「チナ?」
「、、、ジャパン!」
「アー、ヤーパン!(自分を指しながら)ロシア。」
「ロシア?OK。」
「カプチーノ?」
「、、、いや、ごめんなさい。ノー。 (飲んでる場合じゃないって。)でも、ありがとう!」
久しぶりに人と話した。
ロシア人のアーティストなのかな? きっと、展覧会も彼女がやったんだろうな。
カフェのテーブルには コーラの空き缶が4つ出ていた。
もしかしたら、先に山小屋に行った人のかも。
時間はもう22時過ぎ。
1時間かぁ。
最後の力を振り絞って。
行くぞぉーーーーーーー!!!!
次回は第14話。 「ついに?ついに、、、?」
さぁバッケンに着くのか!?
お楽しみに。
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